獣医師コラム:覚えておきたい!自宅で行うペットのバイタルサイン
バイタルサインとは生命兆候という意味の医学用語ですが、具体的には体温、心拍数(脈拍)、呼吸数、血圧の4つが基本となります。バイタルサインのチェックは普段から慣れておく事が大切です。健康時のバイタルサインを知っておくことで、異常時にいち早く気づくことができます。
今回は自宅で行うバイタルサイン(体温、心拍数、呼吸数)のチェック方法、動物におけるバイタルサインの正常値について詳しく解説いたします。
◎ 体温
・正常値
犬37~38℃ (子犬や小型犬は高め、大型犬、老犬は低めです。)
猫37.5~38.5℃(子猫は高め、老猫は低めです。)
・測り方
耳または直腸から測る方法があります。直腸から測る方法は動物が嫌がることが多く2人がかりで測る必要があります。お勧めは耳で測る方法です。動物用の耳で測定できる体温計を使います。
体温計がない場合は耳、わきの下、お腹などを触り、普段より熱く感じる時は発熱している可能性があります。普段から耳やわきの下などを触り、正常なときの体温に慣れておくとよいです。
・注意点
運動後は体温が上がります。
・高体温の原因
熱中症・感染症・腫瘍・免疫疾患・甲状腺機能亢進症など。
・低体温の原因
低体温症:子犬や老齢、持病があり体温調節機能が正常でないために起こります。
◎ 心拍数
・正常値(1分間)
犬60~140回(小型犬60~80回、大型犬40~50回、子犬220回以下)
猫120~220回
・測り方
安静時に測ります。左の心臓の位置に手のひらまたは指先を当て、1分間に何回鼓動を感じるか数えます。15秒間の鼓動を数え、それを4倍にしても構いません。
・注意点
興奮している時は心拍数が早くなります、抱っこして落ち着かせてから測りなおしましょう。
・心拍数が早い原因
心臓病、不整脈、貧血、発熱、ショック、中毒、甲状腺機能亢進症、興奮、不安、疼痛など。
・心拍数が遅い原因
甲状腺機能低下症、低体温、不整脈、脳幹の病変、重度の代謝性疾患など。
◎ 呼吸数
・正常値(1分間)
小型犬20回前後
大型犬15回前後
30回を超えると異常サインです。
猫20~30回
・測り方
安静時に測ります。寝ている時や伏せの姿勢時が良いです。スーハ―という呼吸音を1回と数えるか、胸が膨らむ回数を数えます。1分間の回数または、15秒間の回数を4倍したものを測定します。
・注意点
運動後や興奮時に舌を出してハァハァしているのはパンティングという行動で問題にはなりません。測定時は必ず安静時に行いましょう。呼吸数は早い時に問題となることが多いです。呼吸数が早く落ち着きがなく苦しい時は、緊急で処置が必要となるので注意しましょう。
・呼吸数が早い原因
心不全、胸水貯留、肺の疾患(肺炎、感染、誤嚥、肺水腫)、気管の疾患(感染、気管虚脱)鼻閉塞(感染、腫瘍、短頭腫)など。