獣医師コラム:犬・猫ワクチンの副反応とは
新型コロナウイルスのワクチン接種が始まり、ワクチンの副反応が注目されています。どんなワクチンにも副反応はあります。しかし、ワクチンを接種することのメリットが大きいため接種されます。今回は犬、猫におけるワクチンの副反応について詳しく解説いたします。
■ワクチンの副反応の種類
・活動性の低下、発熱
最も多くみられる症状です。通常数日で治まります。
・ワクチン接種部位の痛み、腫れ
通常接種部位の痛みや腫れは数日で治まります。
・肉腫(猫)
猫はワクチンに限らず薬剤を皮下注射した部位に悪性の肉腫が発生することがあります。転移することもあります。
ワクチンでの発生率:1万回の接種につき1~4例との報告があります。
発生する時期:ワクチン接種後4か月~3年
治療:肉腫の外科切除を行います。大きく切除することが必要となります。そのため猫でワクチンを接種する部位は万が一肉腫が発生したときに完全に切除できる足の付け根に接種します。
ワクチン接種後、接種部位に腫瘤が残り消えないときは動物病院へ相談しましょう。
・アレルギー
皮膚症状:顔面の腫脹、痒み、蕁麻疹など(ネコでは少ないです)
消化器症状:下痢、嘔吐など
発生率:犬の場合、皮膚症状1万回接種につき42.6例 消化器症状1万回接種につき27.9例と報告されています。
発生する期間:ワクチン接種後数~24時間~数日
治療:ステロイド、抗アレルギー薬を注射、その後数日内服します。
・アナフィラキシー
虚脱、低血圧、チアノーゼ、呼吸促拍、呼吸困難などの循環器や呼吸器の症状が出ます。適切な処置を受けないと命に係わります。
発生率:犬では1万回接種につき7.2例
発生する期間:ワクチン接種数分後から60分以内。5分以内が一番多いです。
治療:救急の対応を行います。酸素吸入、アドレナリンの投与、血管を確保し点滴、ステロイドや抗ヒスタミン、気管拡張薬などの薬剤を投与します。
・免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症
免疫介在溶血性とは免疫が関与し赤血球が破壊され貧血が起こる病気です。免疫介在性血小板減少症とは免疫が関与し血小板破壊され血小板が減少する病気です。発症する原因は様々ですが、ワクチン接種の副反応も原因の1つと考えられます。
治療:ステロイドによる治療を行います。
・その他ブドウ膜炎や脳炎
■ワクチン接種時の注意
・アナフィラキシーは接種直後に起こることが多いです。もしもアナフィラキシーを起こした場合すぐに処置をしてもらえるよう、しばらく待合室などで様子を見ましょう。
・皮膚症状や消化器症状は帰宅後に出ることもあります。接種した後にペットを1匹でお留守番させることは危険です。1日見ていられる日に接種しましょう。
・ワクチン接種後すぐに動物病院が閉まってしまう夕方は、処置が遅れてしまう可能性があります。なるべく午前中に接種しましょう。
・ワクチンを接種する日はフィラリア薬など毎日飲んでいる薬以外のものを与えることはやめましょう。副反応が出た場合、何が原因かわからなくなってしまいます。
■副反応が出てしまったたら
少し元気がないなどの症状は、動物病院へ行ったことによる疲れ、ワクチン接種による免疫応答で現れることがあり、安静にしていれば治まります。アナフィラキシーは命にかかわるためすぐに動物病院スタッフへ知らせましょう。消化器症状や皮膚症状もアレルギーなので治療が必要です。様子を見ずに動物病院へ相談しましょう。
副反応が出た場合、次のワクチンはどうするか悩まれる方は多いと思います。しっかりと感染症を予防できる抗体価が有れば、副反応の可能性があるワクチンを接種する必要はありません。その場合、抗体価検査を行います。接種の必要性がある場合、8種を6種のワクチンへ変更することやワクチンのメーカーを変更するなどの方法もあります。動物病院で相談しましょう。
ワクチンは大切なペットを重大な感染症から守るために必要です。副反応についてよく理解したうえで接種しましょう。