獣医師コラム:ペットの咳
新型コロナウイルスが流行してから人の咳には敏感になってしましがちですが、ペットの咳はどうでしょうか?犬猫の咳は人と同じく生理的な咳と、病気で出る咳があります。病気で出る咳は治療が必要ですが、咳だと飼い主様が気づかないことや、咳をしている以外は元気があるということ理由で様子を見てしまう飼い主様もいらっしゃいます。今回は犬猫の咳について原因や対処法、治療などについて解説いたします。
■咳が出る原因
咳は体にある咳の受容体を刺激することででます。咳を起こす刺激は以下の4つが考えられます。
- 機械的な刺激
・ほこり、異物
・気管支の圧迫
・心臓拡大や腫瘍による気管、気管支の圧迫
- 化学的な刺激
・刺激性、有毒ガスの吸入など
- 炎症性刺激
- 温度刺激
・冷気の吸入
◎様子をみていい咳
埃の刺激で出た咳や、冷気による刺激で出た咳など一過性の咳は生理的な反応です。
◎リードけん引で起こる咳
お散歩時に毎回リードの牽引で咳が出る場合は、首輪やハーネスが合っていないことが考えられます。健康なワンちゃんでもリードけん引時の咳が続けば気管に負担がかかります。ハーネスを変えることで咳の頻度を減らせることもあります。気管に負担のかからないY字ハーネスがおすすめです。
■咳が出る病気
気管支炎
代表的なものでは子犬で多い犬伝染性気管・気管支炎(ケネルコフ)という病気があります。
ケネルコフは食欲元気があり咳が軽度な場合は自然と良化しますが、重症化すると肺炎などの合併症を起こし亡くなることもあります。原因はウイルスや細菌などの複合感染です。治療は抗生剤、鎮咳薬、気管支拡張薬、ネブライザーです。
気管虚脱
気管虚脱は筒状の気管がつぶれてしまう病気です。初期は一過性の乾いた咳がみられますが重症化するとガチョウのようなガーガーした咳、呼吸になり呼吸困難となります。正確な原因は不明ですが、遺伝や高温多湿、よく吠こと、リードの牽引などが考えられています。
治療は症状に合わせた投薬が行われますが完治はしません。外科手術を行う場合もあります。
猫喘息
猫喘息の症状は発作性の咳や喘鳴、呼吸困難です。原因はわかっていませんがたばこの煙、ハウスダスト、芳香剤など臭いのするもの、ウイルスや細菌感染が原因で発症、悪化させるのではないかといわれています。呼吸困難時は緊急の治療が必要です。喘息と診断されたら可能な限りアレルゲンと考えられるものを避けることも重要です。ステロイドや気管支拡張薬を使用しコントロールしていきます。
心臓病
代表的なものは高齢の小型犬に多く起こる僧帽弁閉鎖不全症があります。症状として淡を吐き出すような咳が出ます。咳の原因は心臓が大きくなり気管を圧迫することで出ます。進行すると興奮時に失神することや、肺水腫を起こし呼吸困難になります。重要なのは早期に発見し、適切な治療を行い、進行を遅らせることです。
肺炎
肺炎を起こすと咳や発熱などの症状が出ます。原因は最近、ウイルス、真菌、寄生虫の感染によるもの、アレルギー、誤嚥などがあります。レントゲンや血液検査で肺炎の原因を診断し適切な治療を行います。
腫瘍
肺や気管、縦隔、喉頭などに発症した腫瘍は咳が症状として出ます。
◎動物病院受診が必要な咳
呼吸困難時:苦しそう、ぐったりしているときは緊急性があるのですぐに受診しましょう。
子犬の咳:ケネルコフが考えられます、自然治癒することもありますが咳の頻度が多い場合は受診しましょう。
高齢動物の咳:心臓病の可能性もあります。早期発見が重要です。
慢性的な咳:年齢を問わず慢性的な咳は気管虚脱や腫瘍などの可能性があるので受診しましょう。
ペットの咳はケホケホした咳、ぜぇぜぇした咳、喉に何かが詰まっているような咳、吐きたそうにしている咳、ガチョウが鳴くようなガーガーという咳など、原因によって様々な咳をします。吐きたそうにしている場合、吐き気と勘違いしてしまうこともあります。ペットが咳をしている?と感じた時は動画に残し獣医師に相談しましょう。
また、咳のでる持病のあるワンちゃんに呼吸器への負担をかけないよう、首輪や気管を圧迫する構造のハーネスの使用は避けましょう。