獣医師コラム:病気で起こる脱毛
秋は換毛の季節です。換毛は季節性の脱毛で生理的な現象です。今回は脱毛について、病気が原因で起こる脱毛症を詳しく解説いたします。
脱毛症の原因
炎症が原因の脱毛症
・外傷性
・感染性
・免疫介在性
非炎症性の脱毛症
・ホルモン性
・虚血性
・種々の脱毛症
外傷性の脱毛症
外傷性の脱毛症は、咬む、体を擦る、猫が舐めて毛を切り壊すことで脱毛します。
・アレルギー
・ノミや疥癬の寄生による皮膚炎
・心因性脱毛:猫の心因性脱毛は、ストレスが原因で慢性的に過度のグルーミングを行うことで起こります
原因となるアレルギーやノミ、疥癬の駆虫・治療を行います。
心因性の場合、原因となるストレスをなくす、エリザベスカラーなどで患部をなめられないようにする、薬物療法による治療があります。
感染性の脱毛症
・膿皮症
・ニキビダニ
・皮膚糸状菌症
皮膚検査を行い感染の有無を調べます。外用薬や内服薬で感染の治療を行います。
免疫介在性の脱毛症
・脂腺炎
・表層性天疱瘡
・円形脱毛症
・多形紅斑
・エリテマトーデス
・上皮向性リンパ腫
皮膚の生検などを行い診断します。治療はステロイドや免疫抑制剤を使用しいます。
ホルモン性の脱毛症
左右対称に脱毛します。皮膚の色素沈着がみられます。
・副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
・甲状腺機能低下症
・性ホルモン失調:中~高齢の未去勢、未避妊の犬でまれにみられます。
・脱毛症X:好発犬種はポメラニアンです。
ホルモン性の脱毛症は、脱毛以外にも症状を伴います。副腎や甲状腺が原因である場合はその基礎疾患の治療を行います。性ホルモン失調が原因である場合には去勢・避妊手術を行うことで改善されます。
虚血性脱毛症
・狂犬病ワクチン接種後の脱毛症(局所性、全身性)
無治療となることが多いです。
種々の脱毛症
・パターン脱毛症:好発犬種はミニチュアダックスフンド、ミニチュアピンシャーです。耳介、大腿部に左右対称脱毛が起こります。
・休止期脱毛症:高熱など重篤な疾患の後に急激な全身性の脱毛が起こります。
・毛刈り後の脱毛:頻繁にっ毛刈りをすることで毛が再成長しなくなることで起こります。
・淡色被毛脱毛症:ブルーやフォーンの被毛色の犬で淡色の被毛が脱毛する遺伝性疾患です。
・黒色被毛形成異常:2色以上の被毛で構成される犬で、黒色の被毛が脱毛します。
・季節性側腹部脱毛症:11月~3月にかけて脱毛が起こり春から夏にかけて自然と治ります。好発犬種はボクサー、イングリッシュブルドッグです。
これらの脱毛症は、確立された治療法がありません、メラトニンの投与を行う場合や、無治療で経過観察とする場合があります。
炎症を伴う脱毛症に比べ、炎症を伴わない脱毛症は病気に気づきにくいです。診断は様々な病気を否定していくため、時間がかかる場合もあります。
脱毛という皮膚症状だけでもホルモン性の脱毛症のように全身性の疾患であることもあります。ホルモン性の脱毛症の場合、様々な合併症を起こすため原疾患を治療しなければなりません。皮膚病の予防や皮膚や被毛の変化に気づけるよう、ペットのグルーミングは定期的に行うようにしましょう。