獣医師コラム:忘れていませんか?【狂犬病予防注射】
犬の飼い主は、毎年犬に狂犬病予防注射を受けさせることが義務づけられています。しかし狂犬病予防注射の接種率が低下しています。狂犬病集合注射が新型コロナウイルスの影響で中止となり接種し忘れていたり、外出自粛によって動物病院での接種を控えていたりする方もいるのではないでしょうか?
今回は狂犬病予防注射の疑問について解説いたします。
◎ 狂犬病とは?
狂犬病は犬だけのウイルス感染症ではなく、ほとんどの哺乳類に感染可能なウイルス感染症です。発症した場合、致死率は100%という恐ろしい感染症です。
狂犬病の国内発生がないのは日本を含むごく少数の国だけです。現在も世界では狂犬病によって年間およそ5万5千人の人が亡くなっています。
日本では1957年以降、人にも動物にも狂犬病の発生はありませんが、狂犬病流行国で犬に咬まれ、来日後発症した方が確認されたと今年ニュースになりました。
◎ なぜ狂犬病予防注射が必要なの?
狂犬病が流行する近隣国では犬が主なまん延源となっています。WHOは狂犬病の流行を阻止するにはワクチン注射率は70%以上必要としています。
万が一、狂犬病が日本に侵入した場合に備え、飼い主へ毎年1回の狂犬病予防注射を義務づけています。
◎ 狂犬病予防法とは?
飼い主は犬の登録をし、狂犬病予防注射を犬に受けさせなければなりません。
また、交付された鑑札と注射済票は必ず犬に付けなければなりません。
◎ 登録や予防注射を受けないと犬や飼い主はどうなる?
登録をしていない犬、予防注射を受けていない犬、鑑札や済票を付けていない犬は捕獲、抑留の対象になります。また飼い主は20万円以下の罰金となります。
◎ 狂犬病予防注射はどこで接種できる?
狂犬病予防注射は動物病院で接種できます。動物病院によって注射済票をその場で受け取れる場合と、ご自身で管轄の保健所などに注射証明書を持っていき注射済票を発行する手続きが必要な場合と、動物病院が代行で手続きを行い、後日注射済票をお渡しする場合があります。接種予定の動物病院へ確認しましょう。
◎ 狂犬病予防注射を猶予できる?
狂犬病予防注射は犬の体調が悪い場合や重い持病がある場合、獣医師の判断により接種が免除される場合があります。例としては過去に狂犬病予防注射でアレルギー反応が出た、重い免疫疾患を患っている、癌の治療中であるなど接種することで犬の生命に影響を及ぼす可能性がある場合に免除されます。飼い主の判断では免除はされないので、必ず獣医師に診察してもらい、発行された猶予証明書を持って保健所などで手続きしましょう。
◎ 狂犬病予防注射の接種期間は?
毎年4~6月が狂犬病予防注射期間とされていますが、今年は各地で接種期間が延期されています。また、忘れていて決められた接種期間を過ぎてしまったとしても動物病院では接種できます、また手続きも行えますので必ず接種しましょう。