獣医師コラム:【ワクチンの疑問】ワクチン接種は毎年必要?
犬、猫が感染症にかからないようワクチン接種をして予防することはとても重要なことです。しかし、ワクチン接種は感染症予防というメリットだけでなく、ワクチン接種により発生するアレルギー反応などのデメリットもあります。今回は犬猫のワクチンの疑問にお答えいたします。
◎ ワクチンの〇種って?
予防できる病気の数がワクチンの何種に当たります。
犬5種なら5種類の病気を予防できるということです。
◎ 何種のワクチンがいいの?
犬のワクチン
生活環境にかかわらずすべてのワンちゃんが接種すべきワクチン
・狂犬病
・犬ジステンパーウイルス
・犬パルボウイルス2型
・犬アデノウイルス2型
生活環境、生活様式によって該当するワンちゃんのみ必要なワクチン
・犬パラインフルエンザ
・レプトスピラ
・ボルデテラ
猫のワクチン
生活環境にかかわらずすべての猫が接種すべきワクチン
・猫汎白血球減少症ウイルス
・猫ヘルペスウイルス2型
・猫カリシウイルス
生活環境、生活様式によって該当する猫のみ必要なワクチン
・猫白血病ウイルス
・クラミジア
・狂犬病
*生活環境、生活様式によって該当するとは集団飼育、感染症発症地域、屋外飼育などの理由で接種が必要と判断されることです。
犬の場合5種・6種を接種するか、8種にするか、猫の場合3種にするか5種にするかは生活環境、生活様式によって変わります。かかりつけの先生に自分の子は必要性があるか相談して決めましょう。
◎ ワクチンの副作用は?
ワクチン接種後の副作用の発生率は犬0.63%猫1.25%、そのうち命にかかわるアナフィラキシー症状の発生率は犬0.072%猫0.019%との報告があります。
副作用の種類
アレルギー、アナフィラキシー、免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、ブドウ膜炎、全身性血清病、肉芽腫、脳炎、多発性神経根炎、皮膚肉芽腫、肉腫、発熱、流産、不妊、先天性奇形…などがあります。
◎ ワクチン接種は毎年必要なの?
実は・・・ワクチンの追加接種が1年ごとでも3年ごとでもワクチンの効果に有意差がないことが明らかになっています。
世界小動物獣医師協会のワクチン接種ガイドラインでは
・犬ジステンパーウイルス
・犬パルボウイルス2型
・犬アデノウイルス2型
・猫汎白血球減少症ウイルス
・猫ヘルペスウイルス2型
・猫カリシウイルス
・猫白血病ウイルス
これらのワクチンは幼若期のシリーズの1年後に接種したあとは3年(種類によっては3年以上)間隔での追加接種を推奨しています。ガイドラインでは3年間隔とされていますがワクチン接種1年後に抗体価検査を行ったら抗体価がないという子も時々います。後で解説する抗体価検査を実施してから接種間隔を決定することが良いと思います。
*レプトスピラ、犬パラインフルエンザやクラミジアは毎年接種となっています。狂犬病は法律で1年ごとに接種が義務なので、毎年の接種が必要です。
ワクチンで副作用がでてしまった子やアレルギーのある子の飼い主がよくされる質問です。また、トリミングやペットホテル、ドックランを利用するため1年ごとにワクチン証明書が必要となることがありますが、免疫がしっかりある子に毎年ワクチンを接種することは副作用の面からも推奨されません。
そのような場合、抗体価検査という方法があります。血液を採り病原体に対して防御可能な抗体をしっかり持っているかを検査します。防御可能であった場合、抗体価検査結果が証明書となります。抗体価がある場合、3年間隔のワクチン接種でも安心です。
検査することで不必要なワクチン接種を避けることができますが、この検査で抗体価がないとなればワクチン接種が必要となります。かかりつけの先生にご相談ください。
ワクチンはメリットだけでなく副作用というデメッリトもあります。接種前に予防できる病気を理解し、接種後は副作用が出ないか注意しましょう。また、副作用が過去に出たことやアレルギーなどの持病がある場合には、抗体価検査を選択肢の一つに入れることをおすすめします。
参考文献
犬と猫の治療ガイド
WASAVAワクチネーションガイドライン