獣医師コラム:血液検査・血液化学検査・尿検査でわかること
動物病院では病気の時や健康診断時に血液検査・血液化学検査や尿検査を行います。これらの検査はワンちゃんネコちゃんの全身状態を把握し、臓器のどこに異常があるかを特定するための検査です。
今回は血液検査・血液化学検査・尿検査でわかること、検査をするタイミングなどを解説いたします。
■血液検査・血液化学検査
動物の採血は前肢、後肢、首などの血管から行います。
血液検査では
・赤血球:増加症(脱水、出血性胃腸炎、心疾患、呼吸器疾患、腫瘍など)
低下(貧血)
・白血球:炎症の存在、ストレスの存在、腫瘍(リンパ腫、肥満細胞腫など)
・血小板:減少(骨髄での産生低下、消費・破壊亢進など)
増加(急性出血、悪性腫瘍)
・血症成分:黄疸(溶血性貧血、肝臓の異常)
高脂血症(内分泌疾患、代謝性疾患、肝臓の異常)
溶血(免疫介在性貧血など)
の情報が分かります。
血液化学検査では
腎臓(BUN、Cre、P)
肝臓(GPT、GOT、ALP、GGT、ビリルビン、アンモニア、総胆汁酸)
膵臓(アミラーゼ、リパーゼ、TLI)
副腎(GPT、GOT、ALP、GGT、GLu)
甲状腺(Tcho、T₄、fT₄、TSH)
消化器(Na、K、Cl、TP、Alb、Glob、Tcho)
糖尿病(Glu、フルクトサミン)
神経兆候の原因(低血糖、高K、低Ca、高アンモニア)
電解質の異常(Na、K、Cl)
などの情報が分かります。
■尿検査
尿の採取方法は自然排尿、カテーテルを尿道に通す方法、膀胱に針を刺し直接尿を採る方法があります。通常は自然排尿された尿での検査が可能ですが、異常があった場合はより正確な情報が得られる膀胱から直接尿を採取する方法がとられることもあります。
尿試験紙では
・PH(アルカリ尿ではストロバイト結晶・結石形成のリスク↑、膀胱内細菌増殖)
・尿蛋白(尿路系の炎症や腎機能低下)
・潜血(血尿の有無)
・糖(糖尿病)
・ケトン体(飢餓や糖尿病性ケトアシドーシス)
・ビリルビン(肝胆道系の疾患、溶血性疾患)
等の情報が分かります。
■尿沈渣(尿を遠心分離後、沈査を顕微鏡で評価)では
・赤血球(尿路系の出血)
・白血球(尿路系の炎症)
・上皮細胞(異常な細胞がみられる場合腫瘍が疑われる)
・結晶(ストロバイト結晶、シュウ酸カルシュウム結晶など)
・細菌(尿路系の感染)
などの情報が分かります。
検査のタイミングは?
具合が悪く、症状があるときは全身状態の把握のためすべての検査を行うことがお勧めです。しかし若いワンちゃんが1回の軟便で元気も食欲もあるといった場合、全ての検査を行う必要はないかもしれません。症状がある場合は獣医師に検査の必要性を確認しましょう。
健康時の検査タイミングは、若いうちは健康診断で1年に1回、高齢期では1年に2回(理想は1年に4回)行いましょう。
健康時にとっておいたデーターは、病気の時や高齢になってからの検査結果と比較をすることかでき、些細な異常も早期に発見につながります。
おすすめは春に行うフィラリアの検査で一緒に健康診断の血液検査を行うことや、誕生日の月に毎年行うように決めておくと忘れずに行えます。
血液検査や尿検査は病気の時はもちろん、健康時の状態をデーターとして残しておくことは病気の早期発見につながります。私達人間と同様にペットも1年に1回は動物病院で健康診断を行いましょう。