獣医師コラム:【犬の問題行動】食糞は直せますか?
動物病院へ子犬を連れてくる飼い主様から食糞はどうしたら直せますか?と質問を受けることがあります。子犬の場合、成長とともに直ることが多いのですが、適切なしつけをしないと成犬になっても繰り返してしまうこともあります。今回、ワンちゃんは食糞をどうしてしてしまうのか、食糞を直す方法はあるのか詳しく解説いたします。
◎ 食糞の原因
①食欲が異常に増してしまう原因がある
寄生虫感染している
消化器や肝臓の疾患
内分泌の疾患など
②食事の量、栄養分が足りていない
③退屈、遊んでいるうち食べてしまう
④食べると飼い主が騒ぐ、かまってくれると勘違いする
⑤分離不安など不安障害
⑥ストレスなどからくる常同障害
(子犬の場合②〜④の原因と寄生虫感染が考えられます。)
◎ 原因ごとの対策
①食欲が異常に増してしまう原因がある場合
食糞が気になる時は動物病院に連れて行き、獣医師に相談しましょう。
一般的な身体検査、糞便検査を受け食欲が異常に増す原因がないか調べます。必要性があれば血液検査なども行います。疾患が見つかった場合、その疾患の治療優先して行います。来院時は糞便検査ができるように新鮮な便を持って行きましょう。
②食事の量、栄養分が足りていない場合
子犬の頃は食事の量が足りていないという問題が時々あります。成長期に合わせた適正な食事量や食事回数を見直しましょう。
また、栄養分が足りていないこともあります。良質のフードに切り替えてみるのも良いでしょう。
③④退屈で食べてしまう、遊んでいるうちに食べてしまう場合
・排便をしたらすぐに片付ける事が大事です。
排便をするタイミングは、食事の後、運動した後、起きた時です。このタイミングを見逃さず、排便後はすぐに片付けるように気をつけます。また、夜中に排便して食べてしまう場合には、食事時間の変更や散歩時間を変更することで排便時間が夜中にならないように工夫します。
・犬が便を食べているところを見つけても絶対に騒がない、叱らないようにします。騒ぐと犬は遊んでくれている、かまってくれたと勘違いしてしまいます。
・それでも直らない場合は、便のにおい、味、性状を変える工夫をする。
タンパク源が異なるフードに変更したり、食糞防止用のサプリメントなどを食べさせることで匂いや味を変えることができます。
また、繊維質の多い食事に変えると便がパサパサになり性状が変わるため口当たりが悪くなり、食糞をやめることあります。動物病院で取り扱う療法食に高繊維食があるので獣医師に相談しましょう。
⑤⑥不安障害や常同障害の場合
①〜④の原因が否定され、異常なほど便に執着する場合、実は不安があったり強いストレスがかかっているため食糞をしている可能性があります。
食糞が異常な場合には、不安やストレスを取り除くための行動療法や、場合によっては薬を使った治療が必要となることもあります。獣医師に相談しましょう。
食糞は治らないものだ諦める前に、まずは原因をしっかり把握し、原因に適した対策を行いましょう。また、食糞の原因には病気が隠れていることもあります、体調面で気になることがある場合は獣医師に相談しましょう。
参考文献
犬と猫の治療ガイド