獣医師コラム:犬のフィラリア予防について
春に狂犬病やワクチンで動物病院を受診すると、フィラリア検査や予防薬の購入を勧められませんか?動物病院で言われるがまま検査を受け予防薬を購入していると言う方も多いのではないでしょうか?今回はフィラリアについて、検査や予防の必要性、予防薬の種類など飼い主様の疑問にお答えいたします。
◎ フィラリア症
犬のフィラリア症は、蚊によって媒介されるフィラリアが犬の心臓や肺動脈に寄生する病気です。症状は寄生する数によって異なりますが、咳などの呼吸器症状、循環不全による腹水の貯留などがあります。寄生虫が肺動脈から右心室・右心房、大静脈に移動し大静脈症候群と言う状態となった場合、突然死する危険性があります。
◎ 治療法
現在、成虫の駆虫薬が販売されていないため、一般的な治療は成虫の寿命を待つ治療となります。外科手術で成虫を摘出することは難しいです。
そのため成虫を寄生させない、予防をしっかり行うことが重要なのです。
◎ 予防期間
開始時期:蚊が飛ぶようになって1か月後
終える時期:蚊がいなくなってから1か月後
予防期間は蚊の活動期間よるので、地域によって異なります。都内では5~12月上旬の予防が推奨されています。
◎ なぜ蚊がいなくなっても予防が必要なのか?
予防薬は蚊がいなくなってから1か月後にも投与することが重要です。
犬が蚊に刺されフィラリアの幼虫が犬の体内に入り込みます。体内に入った幼虫は犬の皮下や筋肉で脱皮を繰り返し成長します。このタイミングで予防薬を投与することで、幼虫をまとめて駆虫します。投薬を忘れた場合、成長したフィラリアは心臓へ移動します。心臓や肺動脈に移動したフィラリアに予防薬は効果がないです。1か月に1回忘れずに投与することが大切です。
なぜ予防薬を投与する前に検査が必要なのか?
犬がフィラリアに感染していて、感染しているフィラリアの成虫が子虫を産んでいた場合、予防薬を投与することにより犬の体内で大量に子虫が死滅することによって、犬がショックを起こす可能性があるからです。
◎ フィラリア薬の種類
予防できる寄生虫の種類による違い
①フィラリア予防だけのも
メッリット:安い
デメリット:ノミダニは他の方法で予防が必要
②フィラリア予防とノミやダニなどの寄生虫も予防できるもの
メリット:1回の投与で数種類の寄生虫予防ができる。
デメリット:①に比べ高価
投与方法の違い
①錠剤
メリット:安い。アレルギーがある犬にも安心して使える。
デメリット:薬だと気づいて食べないこともあるので、飼い主が喉の奥まで入れて飲ませる必要があることも。
②チュアブルタイプ
メリット:嗜好性が良い。
デメリット:食物アレルギーがある場合、使えないこともある。犬が食べてくれなかった場合、投薬に苦労する。
③スポットタイプ(皮膚に垂らすタイプ)
メリット:飲み薬を嫌がるペットに、簡単に投与できる。
④注射
メリット:1度の注射で1年間効果があるので投薬の手間がない。投与忘れを防げる。
デメリット:注射時の痛み。体重によって薬の量が決まるので、成長期には使えない。